和歌山まちなかデザイン会議01開催レポート
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2020年11月28日(土)キックオフフォーラム開幕
和歌山市駅や和歌山城前など、再開発が進む和歌山市。この街をもっと住みこなして、自分たちで暮らしやすい街へと変えていくために、新たに官/民/学の境界を超えてまちづくりについて考える場として、まちなかエリアプラットフォーム和歌山 -MAPWA-(マプワ)主催のイベント「和歌山まちなかデザイン会議」がはじまっています。
キックオフフォーラムとなる第1回が、2020年11月28日(土)に開幕されました。まちづくりの専門家として和歌山市をはじめ多数の行政からアドバイザーを委嘱されている(株)商い創造研究所の代表取締役・松本 大地さんに講演いただき、(株)ワカヤマヤモリ舎・橘 麻里さんによる司会のもと、 南海電気鉄道(株)沿線価値創造部長・木原 久友さんや、和歌山市都市建設局 都市計画部長・横山 大輔さん、MAPWA代表・田中 隆介とのクロストークを行いました。
新型コロナウイルスの感染防止対策のために、今回はオンライン配信を試みたところ、全国各地からご参加いただき、視聴者数は80名超えとなりました。予定が合わず視聴できなかった方や要点を振り返りたい方などに向けて、当日の様子をレポートいたします。
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デザイン会議を通じて、まちなかの未来を共に考える
最初は、MAPWA代表・田中による「和歌山まちなかデザイン会議」の趣旨やMAPWAの紹介、まちづくりの機運が高まる和歌山市内の変化に関するプレゼンからスタートしました。
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MAPWAは、都市再生推進法人が運営メンバーとなり、さまざまな人材が集まって、まちなかの現状や課題をふまえて情報共有や意見交換を行い、将来のビジョンの実現に向けて実践的に活動をするエリアプラットフォームです。国土交通省「令和2年度 官民連携まちなか再生推進事業」補助事業として2020年に誕生しました。
運営メンバーは4名。公共空間を含む遊休不動産を活用して地域の賑わいを創出することを目的に各自活動を展開してきた、 一般社団法人みんとしょの代表理事でもある田中、(株)紀州まちづくり舎の代表・吉川 誠人、(株)ワカヤマヤモリ舎の取締役・宮原 崇、一般社団法人市駅グリーングリーンプロジェクトを主宰する和歌山大学観光学部准教授・永瀬 節治です。
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南海和歌山市駅のリニューアルや中心市街地への大学誘致、2014年から実施される遊休不動産の活用提案塾「リノベーションスクール」をきっかけとしたパブリックマインドを持つ民間プレーヤーの増加など、和歌山市内の近年の動向を振り返ったのち、田中はこう締めくくりました。
「“自分たちが暮らしたいと思えるまち”に近付くために、商業や住環境だけでなく、教育や産業など、幅広いテーマごとに課題や潜在資源を把握し、どう活用していくかを考えていく必要があります。そのために今後、さまざまなテーマを掲げて『和歌山まちなかデザイン会議』を開催し、皆さんと一緒に未来のあり方を考える機会をつくっていきたいと考えています」
地方再生まちづくりを目指し、社会交流欲を充足する
続いて、今回のメインコンテンツである(株)商い創造研究所 および(株)賑わい創研の代表取締役社長である松本 大地さんによる講演が行われました。テーマは「ニューノーマル時代の変化対応力 〜地域資源を生かした地方再生まちづくり〜」です。
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松本さんは、東京駅グランスタの立ち上げプロジェクトや鎌倉市深沢再開発画など、官民両者からの委嘱実績を多数持つ、まちづくりの専門家です。国内だけでなく米国オレゴン州ポートランドなどのまちづくり事例にも精通しており、これらの経験や知識をもとに、和歌山市内でも「キーノ和歌山基本計画」や「和歌浦明光通り活性化構想」を手掛けています。
今回の講演では、これまで携わってきた日本各地のまちづくり事例を多数紹介したうえで、和歌山県や和歌山市に関するリサーチ結果から食資源の有効活用を提案。withコロナ・afterコロナをふまえた中心市街地の活性化のポイントを具体的に示してくださいました。
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講演のラストに、松本さんは視聴者に向けて「今、まちなかを再活性するには、多彩な楽しみや出会いのチャンスを集積させ、社会交流欲を充足する必要があるのではないでしょうか。社会交流欲とは、自分が所属する社会や仲間も大切にし、自ら参画意識を持って関わろうとすることです。この観点で発想を展開させることで、まち再生の可能性はたくさん見つかります。ぜひ地域資源を生かし、地方再生まちづくりを実現していきましょう」とメッセージを送りました。
ネットワークを形成し、活動やエリアを超えた広域連携を
ここからは、松本さんの講演内容を受けたクロストークです。「エリアの価値、どう上げる?」のテーマのもと、まちづくり会社・民間企業・行政といった各立場から、和歌山市の再開発状況やまちづくりへのアクションを整理し、未来の展望について議論を繰り広げました。
松本さんからの問題提起「まちなか再生において優先的に考えるべきことは何だと思われますか?」に対して、和歌山市都市建設局の横山さんは2つの項目を挙げました。
「1つ目は、まちづくりの担い手の方々を結び付けたネットワーク形成です。和歌山市は官民連携の最先端だと全国的に評価をいただいています。一方で、和歌山市のまちなかは広域。各活動を有機的に連携させる必要があるので、まさに今日のような場はとても重要です。2つ目は、公共空間や公共施設の利活用です。和歌山市のまちなかはインフラが高水準で整備されています。その公園や水辺などを民間の方々に積極的に解放し、利活用を進めていきたいと思います」
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続いて、松本さんから出された新たな問題提起「地域活性化のアイデアを何かお持ちですか?」について、南海電気鉄道の木原さんは「沿線地域がそれぞれ抱えている課題に対して、南海電鉄が人やノウハウを繋ぎ、横串を刺す役割になれたらと思っています。共通する地域課題を広域連携して共に解決していきたいです」。この意見を受けて、他の登壇者たちも「南海電鉄さんならではの発想で、沿線の価値創造に繋がる素晴らしいアイデアですね」と賛同していました。
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“リピーター”から“サポーター”へ。理想のまちの追求
最後に、視聴者からチャット機能を通じて寄せられた質問について、全員で議論していきました。なかでも「定住人口の増加を目指す前段階として、交流人口の増加が重要だと感じています。いかがお考えでしょうか?」との質問に対し、登壇者全員が力強くうなずきました。
松本さんは登壇者の意見を総括して「交流人口、つまりリピーターを増やすことは大切ですね。打ち上げ花火的な一時的な集客ではなく、何度も通いたくなるには、その地域に暮らす人々と訪れる人々との関わりが生まれる場づくりが必要です。その積み重ねによって、“リピーター”からもう一歩進んで“サポーター”になっていただくことができます。より多くの人々に、地域愛に溢れる応援団の一員となっていただきたいですね」と語りました。
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こうして、あっという間に所定の2時間が経過し、「和歌山まちなかデザイン会議01」は終了を迎えました。松本さんが講演の中でお話しくださったように、社会交流欲が高まる昨今、地元の人々が楽しそうに集い賑わうまちこそが、訪れる人々にも愛されるまちとなることでしょう。
“自分たちが暮らしたいと思えるまち”を目指して、今後も「和歌山まちなかデザイン会議」を開催していきます。第2回もお楽しみに!